辺りは静まり返った夜中。

ルルーシュの部屋の扉がノックされ、次にロロの声がする。

「兄さん、紅茶淹れてみたんだ。兄さんの口に合うか分からないけど」

一人読書をしていたルルーシュは、椅子に座ったまま体を捻り、ロロの方を向いた。

「ありがとう。一緒に飲むんだろ?」

ロロの手にはお盆に載せられたティーカップが2つと、小皿に乗ったマフィンが1つ。

二人でお茶をしようとしているのに、1つしか無いマフィンにルルーシュは不思議そうにロロに意味を訊ねる。

「兄さん読書とか好きでしょ?だから目に負担が来るかなと思って。ブルーベリーは目に良いって聞いたから

ブルーベリーマフィンを作ってみたんだ。

市販のものみたいに着色料や防腐剤は入って無いから、安全だよ。あ、勿論先に味見したから味も大丈夫だし。

兄さんには体に良いものを食べて貰いたいしね」

そうロロが答えると、ルルーシュは微笑んで礼を言った。

ロロはそんなルルーシュに目を奪われている。

それは本来普通の兄弟のイメージからかけ離れたものだ。

勿論、ロロだって始めから兄が弟にべったり世話を焼いたり、妙に親切にしてくれるのを受け入れていた訳ではない。

自分はナナリーの代わりで、ナナリーは足が不自由で、目も見えないからルルーシュがやけに世話を焼いても仕方無いのだと

思っては居たが、でもまだ普通の兄弟ではどうなのか掴みきれておらず、戸惑った。

しかしルルーシュにより、甘やかされて世話をされている内に、家族や兄弟の感覚を知らないロロは、

ルルーシュの『普通』に慣らされてしまったのだ。

今でも礼を言ったルルーシュは、そのままロロの頭を撫でてやっている。

それはまるで幼子を誉めるように。

そしてロロの表情は自然と和らいだものになり、口元も自然と笑みが溢れる。

ロロはあくまで自分はナナリーの代わりだと知っている。

しかしルルーシュの態度に今まで知らなかった家族の幸せを感じてしまい、有り得ないとは思いながらも

このまま幸せが続いて欲しいと願わずには居られないのだ。

「兄さん、大好きだよ」

しかしロロがそう呟けば、返ってくるルルーシュの台詞はいつも決まっている。

「俺も大好きだ、たった一人の弟だもんな、お前は」

あくまで弟。

それでも良いから側にいたいのは、もう後戻り出来ない感情が、ロロに芽生えつつあるから…

このロロの気持ちの行き着く先を知るのは神か悪魔か…

どちらに転ぶのかは、本人たちでさえ、分からない…

=END=




**あとがき**
久々の更新です、長らく放置していて済みません!!
ロロルル可愛くて、狂気で好きです!
08.11.05